①基準タイムを定める

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「基準タイム」とは「各競馬場毎に距離、トラック、馬場状態で平均タイムが何分何秒か」というものです。吉馬では、過去のレース情報をデータベースにもっているので、各競馬場の距離、トラック、馬場状態でグループ化して平均タイムを簡単に求めることができます。この平均タイムが「基準タイム」です。過去のデータが十分に蓄積されているのであれば、エクセルなどで計算できるでしょう。データベースがあればSQLを使って簡単に求めることもできます。

単に平均タイムを基準タイムにして良いのかと思うのですが、簡単に統計の結果を重視したいため、平均のタイムを単に基準タイムとして設定しています。つきつめれば、レースの区分ごとに平均タイムを結び、回帰分析で基準タイムを予測することもできるようですが、統計の世界にドップリつかりそうなので、あくまで平均値を重視して簡単に考えています。

上の図は各地方競馬場の1600m良馬場の基準タイムです。一番タイムが速い盛岡競馬場(競馬場コード10番)で1分40秒9(100.9秒)であり、一番タイムが遅い高知競馬場(競馬場コード31番)で1分47秒7(107.7秒)であることが分かります。かなりのタイム差があることが分かりますね。

基準タイムは膨大な過去の走破タイムを集計して求めます。ここで問題になるのが過去何年分までを集計対象にするかです。吉馬地方競馬版のデータベースには1998年以降の地方競馬のレースデータが蓄積されているので約20年分のデータが存在します。レース数(サンプル数)は多い方が集計値の信頼度が増しますが、競馬場の状態は変化していきます。つまりレースの傾向が変わるタイミングがあるのです。20年分集計してもよいですが、競馬場によってはタイムの傾向(タイムの出やすい出にくい)が変わっているので、基準タイムを設定したとしても、現状のタイム傾向とズレが生じ、結果的に算出したスピード指数の信頼性が落ちてしまいます。このことが基準タイムを改定する理由でもあります。

さて、タイミングとはいつか。地方競馬の場合は「砂の入れ替え」をするときになります。最近では2015年に水沢競馬場や盛岡競馬場の東北地区、南関東の船橋競馬場、さらに2016年1月には金沢競馬場でも砂の入れ替えが行われました。砂の入れ替えをするとレースのタイム傾向が一変してしまいます。それまで高速馬場だった盛岡競馬場が、砂の入れ替え後は時計の掛る馬場へ変貌しました。船橋競馬場も砂の入れ替えを行った2015年以降同様の傾向があります。

基準タイムを設定するには過去の馬場の傾向を見極め、信頼性のためにもある程度のレース数を集計しなければいけません。吉馬スピード指数ver2.0(地方競馬版2019年11月基準タイム改定版)では前述した傾向を考慮した上で「2015年9月~2019年9月までの4年間を集計対象」として基準タイムを設定しています。

集計するにしてもレースに出走したすべての馬を対象にしてよいものでしょうか。例えばあるレースの着順を見た時に、上位入着の馬は賞金が掛っているのでムチをふるって全力で走っているでしょう(力が断然の馬は余裕で走っていることもありますが・・)。しかし下位の馬や不利を受けた馬などはどうでしょうか。もう全力を出しても意味がない。次回に備えようと騎手が判断して全力で追っていないケースもあります。このような状態になると走破タイムは平凡なのもか、それ以下になってしまいます。また、競走中止などタイムが記録されないことや、心房細動など急性疾患で大差のシンガリ負けをすることもあります。このようなデータが基準タイムに入ってしまうと、本来算出されるべきタイムより大きくズレた基準タイムが算出されてしまいます。そのためにも集計対象として「着順のしきい値」を設定するのが妥当と言えるでしょう。

そこで吉馬スピード指数ver2.0(地方競馬版2019年11月基準タイム改定版)では基準タイムを算出するための着順のしきい値を「1着~5着」としています。掲示板を確保するような上位入線馬は、ほぼ力を出し切ってゴールすると想定してしまいます。

さて、吉馬スピード指数の算出式には補正基準タイムとありますが、「補正」とはどういうことでしょうか。レースに出走する馬は様々な斤量を背負って走っていて、53kgで走る馬もいれば57kgを背負って走る馬もいます。斤量は軽いほど有利で速く走れることは想像がつきます。ハンデ戦というレースが存在するように、実績のある馬には重い斤量を背負わせ、実績の無い馬には軽い斤量で走らせて実力を拮抗させます。どの馬にもチャンスを与えてレースを面白くする主催者の思惑です。このようにレースを行う主催者も斤量がタイムに影響を及ぼすことをレースのファクターとして使用しています。馬が背負う斤量がタイムに影響を与えることは明らかなのです。吉馬スピード指数では一律55kgで走っていることにしてタイムを補正しています。基準タイムを算出するときには、一律55kgで補正した補正タイムを使って、どの馬も同一の斤量55kgで走ったとして基準タイムを求めます

一般的に1キロは1馬身(0.2秒)程度影響を及ぼすと考えられています。吉馬スピード指数もこの考えを取り入れています。例えばA馬は57キロを背負いある競馬場の1600mを1分43秒5で走ったとします。これを55キロで走ったことに補正すると、補正値=(55.0-57.0)×0.2から補正値は-0.4秒で、A馬は1分43秒1(103.1秒)で走ったことになります。

「タイム差 = 補正基準タイム – 補正走破タイム」でも分かるように、補正基準タイムと補正走破タイムを比較したタイム差が吉馬スピード指数の基本部分です。補正とは斤量55kgでタイムを補正することです。また、補正基準タイムは馬場状態(良、稍重、重、不良)別に算出しているので、斤量差と馬場差が補正されたタイム差ということになります。

これでタイム差を算出することができました。しかし、これだけではまだ十分とは言えません。